最後の「デザイナー名なし」シリーズは、こちら、「絞首台の謎」です。

「絞首台の謎」

絵柄が、先の「夜歩く」と似ています。
一瞬、同じ絵?と思いました。
単に反転させただけかな、と。
でも、そうではないことは、次の画像を見るとはっきりします。



これはまさに、表紙の絵の色を反転させたものです(windowsの「ペイント」を使っただけですが)。
こうすると、違うデザインだってことがはっきりしますよね。
建物・人物の基本的な配置は似通っていますが、それぞれの絵柄は異なっています。

そこで、この「元の絵はこうだったんだろう」と思われる画像を使って検索してみました。
しかし、芳しい結果は得られませんでした。
(同じような検索結果が得られない)

では、「夜歩く」の時と同じく、下の女性だけを切り取ってみては?と準備したのがこの画像。


こう切り取ると、なんかおかしいですよねぇ。
本当に女性なのでしょうか?

検索の結果は、今回もだめ。


結論としては、この「絞首台の謎」だけは元の絵の詳細がわからないままとなってしまいました。
わかることは、こちらの絵は「夜歩く」に比べて、どうもまがまがしいデザインだぞ、ということです。

さっきの「女性?」の絵も顔が仮面をかぶっているようでおかしいです。
他にも、「夜歩く」とはデザインが対比的です。特に、上部のデザイン。

「夜歩く」の方では天使がいますが、


「絞首台の謎」で姿が見えているのは、悪魔ですよね、これ。


ヒントになりそうなのは、「夜歩く」の検索をしたときに出てきたページにあった、「(「夜歩く」に使われている絵は)ホルバインの標題紙デザインの中で最も有名なもので、何度も模倣された」という説明。

「模倣された」というのは、先の「魔女の隠れ家=死の舞踏」が、他の作者によって何度もコピーされていたことと通じるんでしょう。
ディクスン・カーのデザイナー名無し装丁(1)「魔女の隠れ家」 | -oldsogenbotの雑記帳-

ということは、この「絞首台の謎」の元の絵は、ホルバインのフォロワーによって、モチーフの一部を変更された作品ということなのでしょうか?
あるいはホルバインが、自分の作品のモチーフをパロディとして取り上げた別の作品?
答えははっきりしません…

※ただ、左上の悪魔の後ろ姿の下にかかるアクセサリー状のものに、書かれている"1523"の数字。
これは「夜歩く」で使われていた絵柄の初出とされている、エラスムスのParaphrasis in Evangelium secundum Ioannemの発表年なんです。

参照:
ディクスン・カーのデザイナー名無し装丁(2)「夜歩く」の絵は何だ? | -oldsogenbotの雑記帳-

もしかしてこの絵がそれなんでしょうか…?


結局、「絞首台の謎」については、誰か、美術史や宗教学史?に詳しい人がここを見てくれて、「それは、~ですよ!」と教えてくれることを願うしかない結果になってしまいました。

(もしわかる方がいたら、是非是非、下のtwitterボタンで教えてください!)

でも自分としては、前の二作品については明確にできたので、かなり満足しています。

ディクスン・カー作品で、デザイナー名が無い3作品の謎解きは、これにて(一部謎のまま)お開き。