ディクスン・カーのデザイナー名無し装丁(1)「魔女の隠れ家」

旧装丁botでは、各作品のタイトルと、装丁を担当した人物名を紹介しています。
ほとんどの装丁は担当者がわかるのですが、一部にそういう記載が無いタイトルが存在します。

例えば『ガーデン殺人事件』 ヴァン・ダイン (カバー:記載なし/12版 1969) 横顔マーク なんかもそうです(ただし色違いの「カブト虫」から石垣栄蔵であることは確実)。



それらのデザイナー名が無いタイトルの中で、最も多いのは、ディクスン・カーの作品です。
今回はそれらの装丁についてわかったことを書いていきます。

対象となる装丁はこれらです。
「魔女の隠れ家」

「夜歩く」

「絞首台の謎」

※実は、名前の記載の無いカー作品としてはもう一点「血に飢えた悪鬼」がありますが、今回取り上げる装丁とは毛色が違うので取り上げません。

私はこれらの絵がずっと気になっていて、以前もこれらの装丁のままgoogle検索にかけることはありました。
しかし、当然というべきか、創元推理文庫の表紙としてのしか出て来ません。

そこで今回は少し手法を変えて、絵の一部だけに限定してみたわけです。
最初に試したのは、「魔女の隠れ家」です。

切り取ると、こういう絵になりますね。


さて、検索してみましょう…

検索結果に「!」となりました。驚くほどあっけなく元となる作品がわかったからです。
それは、ハンス・ホルバインという16世紀の画家による作品でした。
ハンス・ホルバイン - Wikipedia

作品名は一連の「死の舞踏」から、「貴族」。
「死」によって、棺桶に誘われる貴族の絵です。


日本語だと、国立西洋美術館のリンクがありましたので紹介します。
ハンス・ホルバイン(子) | 『死の舞踏』:貴族 | 収蔵作品 | 国立西洋美術館

もともとの書籍に含まれていた(?)姿はこちらのサイトで見ることができます。
Hans Holbein's dance of death, Nobleman
(拡大) Holbein: The Nobleman

このサイト
Hans Holbein's Dance of Death
では、ホルバインの「死の舞踏」全点が見られますし、その後の様々なコピー・バリエーションも詳細に紹介されています。
それにしても「死の舞踏」を取り上げるだけでも相当な量の研究があるようですね!

ホルバインという人は、これらの絵よりもむしろ、肖像画に隠された髑髏が特徴的な「大使たち」の方が有名な画家ですね(私はホルバインという名前までは記憶していなかったものの、絵そのものはテレビで見た記憶がありました)。

ファイル:Hans Holbein the Younger - The Ambassadors - Google Art Project.jpg - Wikipedia

とは言え、日本語でも「死の舞踏」だけを取り上げた書籍が出ているように、かなりこれも有名なものなんでしょうね。
Amazon.co.jp: 新版 ホルバイン 死の舞踏 (双書 美術の泉): 海津 忠雄: 本

さて、さい先良く、最初の課題がクリアできました。
次に参りましょう。。。